景気動向指数[先行系列]

これからの景気のちょっと先が見られる

ここでは景気動向指数の先行系列について解説していきます。
さて、「景気に先行する」というのはどういうことでしょうか。

例えば、ある工場が将来景気が良くなる見通しを持っているとしましょう。
すると、その時に備えてその工場は機械設備を充実させますし、
従業員の採用を増やします。
つまり、機械設備の受注数や新規求人数は景気の動きに先行して動くわけです。

このような動きをする指標は色々ありますが、景気動向指数に採用されているものは、
その中でも「先行」という意味で信頼性の高いものです。

したがって、これらの指標を追っていくことで、
かなりの確度で近い将来を予測することができます。


・景気動向指数の先行系列の主な経済指標
新規求人数 ハローワークで、当該調査月に新規に申し込まれた
求人数を翌月に集計・公表します。
新規の求人数が増加するのは、
企業の業績見通しが明るいことを意味します。

大切なのは、新規の求人という点で、
慢性的に求人のある業種などは、
職種自体の人気がないということも考えられるからです。

このように、企業の業績に連動している雇用に対する
経営方針を如実に表しているのが新規求人数です。

この統計の問題点は、規制緩和によりハローワークで
紹介を受ける人達が減少しており、
実際の求人・求職の状況との食い違いが出ている点です。

また、名寄せがされていないため、
複数のハローワークで求職した場合、
それぞれでカウントされることになる点も問題です。

企業の先行き
見通し
強気 新規求人数が増加 景気拡大
弱気 新規求人数が減少 景気縮小

実質機械受注 設備用機械を発注する企業の景気見通しを反映します。
機械受注は引き合いがあってから納入までに
6~9ヶ月かかります。

発注企業はこの納入までの時間を考慮に入れて
早めに注文します。
したがって、機械受注は景気の先行きが明るいと判断して
大きな設備投資をする際の先行指数となります。

ただし、船舶・電力の発注は1回あたりの金額が大きく、
時間も1年以上かかるためズレが生じます。
そのため、これを除いたコアの機械受注統計を
利用することが多いようです。

受注額という金額ベースで集計されるため、
当該機会のコストだけでなく、
インフレ・デフレという外部の物価変動要因で
受注価格が変動すると、統計の連動性が保てなくなります。

これを修正するため、資本財の価格指数で割って、
価格変動分を除去する方法がとられます。
それが実質機械受注です。

最近では、機械の発注自体がぎりぎりまで伸ばされる傾向があり、
先行指標としての信頼性が薄れてきているとの指摘もあります。

景気の見通し 良い 受注増加 景気拡大
悪い 受注減少 景気縮小

新設住宅
着工床面積
家を買うことは一生に一度といってよいくらい大きな買い物です。
消費者が新たに住宅を建設する時、
たいていは住宅ローンを組むことになります。

ローンを組むためには、収入が安定・増加する見込みが
あるということになります。
そうした意味で先行指数として利用されています。

新築住宅の着工統計は、
1.戸数と床面積の2要因についての利用形態別
(持ち家か賃貸用物件か)
2.構造別(木造か鉄筋コンクリートか)
3.一戸建てか長屋形式か
など3分類されて集計されます。

たとえ、一戸建て住宅の着工数が同じでも、
床面積が減少すればコストが低くなり、
景気が拡大しているとはいえません。

床面積が先行指数に採用されているのは、
景気に先行する実質的な動向を反映するからです。
また、この指数は前年同月比での増減率が注目されます。

70㎡の家×4戸 100㎡の家×3戸

長短金利差 日銀の政策金利である短期の代表的なコール市場金利と
債券市場で売買される10年もの利付き国債の長期金利との差が
大きいか小さいかを比較したものです。

コール市場とは、民間金融機関が短期的な手元資金の
余剰や不足を調整するための市場のことです。

日銀はコール市場金利を市場操作で誘導して
景気をコントロールします。

長短金利差が小さいということは、景気が後退して
日銀がコール市場金利を引き下げ、これにつれて長期金利も
低下している状況下にあるということです。

逆に、景気に回復の兆候が見えると、
日銀はコール市場金利を引き上げ、マーケットで売買される
国債の長期金利もコール市場金利の引き上げ幅以上に上昇し、
長期金利差が拡大します。

このように、長期金利差は景気の動向に先行して動きます。